東京及び全国の

    各自治体の民間空襲等被害調査記録について

◇ 総務省 『一般戦災ホームページ』 との一致が必要 ◇


 毎年8月15日に日本武道館で行われる、政府主催の「全国戦没者追悼式」が対象とする死没者の数は、軍人死没者が約230万人、民間死没者が約80万人、計310万人と公表されています。しかし、戦後71年、上記のような統計的死没者総数が積み上げられている、各自治体の調査データの公表は不完全なままの状況です。

現在、東京都をはじめ全国の市区町村では、公的基準はなくても、当然、それぞれに空襲による被災状況の調査記録を残していると思われます。

一方、総務省で『一般戦災ホームページ』をつくって、全国の84市と9区(東京都特別区)の各被災都市の「戦災の状況」を掲載しています。

このうち東京都の場合をみると、合併後の台東、墨田、品川、目黒、渋谷、北、練馬、江戸川の9特別区と、八王子、立川の2市の、計11の区市だけです。
 東京大空襲・戦災資料センターで作成した『決定版 東京空襲写真集』に載っている「本土空襲地域別死者数諸調査」には、全国の被災した都市区町村831のそれぞれの死者数を載せています。その内、東京都の戦時被災区市町村については、36特別区と63市町村の死者数を記録しています。

これらを比較すると、総務省のホームページに掲載されている被災都市の数は、戦後71年経っても、まだまだ少なく歯抜け状態であることが分かります。

 

今後、各被災都市は、総務省の『一般戦災ホームページ』の「国内各都市の戦災の状況」を確認し、全国的な統計資料として充実させて行くことは、総務省及び各被災都市の双方の責務ではないでしょうか。

総務省のホームページに掲載されていない市区町村はもちろん追加、掲載されていても必要があれば改訂を要請したいでしょう。

しかし、その前に、先ず被災した各自治体が自分の地域の被災実態を調査し、自身のホームページに記録すること。
 そして総務省は、『一般戦災ホームページ』で、各被災自治体のホームページにリンクさせるのが格段に合理的ではないでしょうか。そのためには、『一般戦災ホームページ』で被害を示す統計的数字については、全国に共通する一定のルールを定める必要があります。

 

総務省のホームページには、全国の84市と9区(東京都特別区)の各被災都市の「戦災の状況」が以下のような項目に沿って書かれています。

1.空襲等の概況

2.市民生活の状況

3.空襲等の状況

4.復興のあゆみ

5.次世代への継承

この中で、空襲被害時の凄惨な状況と数値的データは、“3.空襲時の状況”に書かれています。ただし、全国的に被害統計をするということを目的としていないらしく、死者数が書いてなかったり、死傷者数で書かれている区や市がある。統計的データにならない。

なぜ死者数が書かれないのか、その理由を考えてみる必要があります。

本来、戦争被害や自然災害が起きた場合、先ず各区市町村は被害状況について調査をするでしょう。救済補償法関係のために調査は必ず行われなければなりません。

前大戦の大都市の空襲被害の規模が大きい上に、戦中は言論統制、戦後は被占領下、戦争被害の報道禁止などGHQによる厳しいプレスコードが敷かれ、調査と公表は控えめになってしまったと想像されます。また、戦前の民間被害者を救済する「戦時災害保護法」や兵役の任に服する者のための「軍事扶助法」と「軍人恩給法」がありました。これ等旧法はGHQによって、昭和21年に廃止され、不完全な一般の生活保護法などに吸収されました。GHQは、米軍による空襲や原爆被害の報道を厳しく禁止していました。行政も調査や死者やその慰霊碑の建立を禁止、東京都ではそれに従って通達を出し、それは現在でも続いているのではないかと思われます。

昭和27年、日本の主権が回復すると、旧軍関係の「戦傷病者戦没者遺族等援護法」や「恩給法」が形を変えて復活したが、民間の戦傷病者や戦没者遺族に関する「戦時災害保護法」は未だに見直しされていません。戦後1947年には日本国憲法が制定されており、国民主権となり、人権を重んじる憲法11条、13条、14条、25条があったけれども、国会議員や法律を作る者の意識は戦前の価値観のままであったと思われます。空襲等被害者についても、この占領下の雰囲気は、今日様々な問題として続いています。われわれは、憲法、特に11条、13条、14条、25条などを理解し、再検討しなければなりません。

 

前記の『一般戦災ホームページ』の項目“3.空襲等の状況”の記録内容について、後世のために、自治体自身の公的歴史として被害の実態を調査記録しておく責務がある。空襲等による公的死者数など把握が示されていない自治体については、下記のような様々な事情があると思われます。

 イ.  空襲等民間被害調査の非公開は戦後行政の慣習がある。

   ・この慣習は、無くさなければならない。

 ロ. 今現在は、「個人情報の保護に関する法律」
     (平成15(2003)年5月30日)の存在とその解釈に準じている。

・自治体として、市民の悲惨な事実、死者の追悼、郷土の歴史、などなどの公共的有意義を忘れ、個人情報保護法の目的を狭く過剰に重視ているのではないか。生きた証としての公開を理解する遺族については、犠牲者名簿や追悼のための刻銘碑を建てることは、個人情報保護法を超えた意義があると思われる。

・公開を望まない遺族については、それを尊重し、その親族の死者名を公開から外す。ただし、空襲等死者数には加えること。

・一家全滅の家族はどう扱うか。少なくとも死者数にいれること。

・遺族が幼少で死亡届を出せる状況になかった、空襲等に因る死者は、失踪宣告などがないように正常な戸籍を回復させ、死者として数えること。

ハ. 役所の戸籍簿が焼失している

・現在の戸籍はどうのように復旧させたか。元内務省に副本があったのか。

・現在の戸籍は遺族の届け出によって作成したのか。

・一家全滅の家族は、戸籍上どう扱っているのか。

・空襲等に起因する死と状況判断ができれば、亡くなった日が、1945年8月15日以降でも、9月15日以前までは、空襲死者として扱う。

ニ. 戸籍の追跡が困難

・地方出身で、大都市での戸籍をもっていなかった都市での行方不明又は死者について、地方自治体と都市自治体との連携で追跡、出来るだけ明瞭にすることが必要となる。

ホ. 地域住民の理解が得られない

・地域の人々と市長や議員に対して、事実の記録と犠牲者の追悼碑等を、地域の歴史として残すことは、被害自治体の責務であることを強調する。

 

“3.空襲等の状況”は、既に書かれている状況に、新しい証言を加えて記録する。それから末尾に前褐のような事情を考慮し、調査に限界を見込みながら、困難な調査状況を記録する。(家族中心にした死者名簿を作成し、男女、年齢を入れ、平均年齢を計算し、これは根拠データとする。)

 死者数の記入表には確認できた合計数字を入れ、確率的に予想されるプラスの数字を備考欄に(+≒○○○人)と工夫する。

 

先ず、民間被害者が、それから各自治体が空襲被害調査公開を理解し協力することが重要でしょう。総務省は不完全ながら既に実施しているのです。

今後は自治体との連携が必要となるでしょう。



                               東京空襲遺族会世話人 西沢俊次

                                          以 上 

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