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    東京大空襲訴訟は終了
    大阪空襲訴訟は最高裁に上告中
    「沖縄戦」国賠訴訟は沖縄地裁で審理中
    「南洋戦」      〃

 空襲被害訴訟の目的は一貫して全国の空襲等被害者の救済を求めることで共通しています。

 全国の皆さま、空襲被害都市の皆さま方に、空襲被害訴訟と「空襲被害者等援護法」の実現にご協力をお願い致します。ご理解を頂くために、集団訴訟「東京大空襲訴訟」第一審の不合理な判決理由を中心に、続いている大阪空襲、沖縄戦、南洋戦の空襲被害裁判の状況を、ごく分かりやすくお知らせしておきたいと思います。                                
                                     世話人 西沢俊次


  東京大空襲訴訟

 平成19年東京大空襲被害者122名が、国を相手に補償を求めて、東京地方裁判所に訴訟を起こしました。

▼ 第一審 東京地方裁判所

▶ 訴 状   原告星野弘他111名   平成19(2007)年3月9日

 (119頁から成る文書の主旨)

 本件は、国の戦争により、父母兄弟・身内を失くした人、障害者になった人、孤児になった人、家・財産を失った人などの戦中戦後の筆舌に尽くせない辛酸な生き様を明らかにし、何らの援助もせず放置した国の責任を問う。日本国憲法に基づき、民間戦争犠牲者への追悼、謝罪、賠償を求める。

▶ 答弁書 被告国の指定代理人8 名 平成19(2007)年5月24日

(23頁から成る文書の主旨)

 「戦争被害ないし戦争損害は、国の存亡にかかわる非常事態のもとでは、国民のひとしく受忍しなければならなかったところであって、これに対する補償は憲法の全く予想しないところであって、その補償のために適宜の立法措置を講ずるか否かの判断は国会の裁量的権限に委ねられるものと解すべきことは、当裁判所の判例の趣旨に徴し明らかというべきである。(最高裁昭和43年1月27日大法廷判決)」 
 したがって、原告らの受けた損害は憲法の枠外の損害であって、それを賠償ないし補償しないという立法上ないし行政上の不作為が、国賠法上違法であると評価される余地はない。
 速やかに棄却されるべきである。

 (注)この答弁書に書かれている判例は、カナダ在外資産補償問題であって、
    人的被害ではありません。時代錯誤も甚だしい内容です。

ここから法廷での口頭弁論です。

第 1回口頭弁論  平成19(2007)年 5月24日
第10回口頭弁論  平成21(2009)年 5月21日
  弁護団と証人と原告の陳述は、10回にわたって行われました。

1. 被害の調査  2. 遺体の確認と埋葬  3. 孤児や浮浪者の保護・施設への収容4. 被災者に対する救済・援護  5. 補償を要求。

 弁護団は、国の行った戦争による被害と、被害者の今の状況、そして戦後60年経っても何の援護もして来なかったことを、幅広くたくさんの陳述書や証人の陳述で示して、憲法に基づく国の補償責任を追及しました。弁護団の先生方の他に、学者等証人陳述は4名、原告陳述は延べ19名。

 一方、被告国の代理人は、毎回数人が立ち会うが、ほとんど陳述や反論をしません。弁明をしたところで、自らの憲法解釈に矛盾を抱え、かえって藪蛇に陥ると考えるからだろうか、全て裁判長に任せていました。

 そして、期待された判決日

東京地方裁判所判決  平成21(2009)年12月14日

  主 文
    1. 原告らの請求をいずれも棄却する。
    2. 訴訟費用は原告らの負担とする。 

  鶴岡稔彦裁判長が、小さい声で数行の主文を読み上げ、他の2名の裁判官と共に、そそくさと退席。100名の満席傍聴席からは唖然として声も出なかった。

  判決理由の主要部分四つを挙げてみます。
判決理由(要旨抜粋)

1.立法不作為について

 「立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、憲法上保障されている権利行使の機会を保障するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けるものというべきである(最高裁判所平成17年9月14日大法廷判決)。」

  平等原則(第14条)違反について

 「一般戦争被害者が受けた戦争被害といえども、国家の指導の下に行われた戦争による被害であるという点においては、軍人、軍属との間に本質的な違いはないという議論は、成り立ちえるものと考えることができる。
 原告らの受けた苦痛や労苦には計り知れないものがあったことは明らかである。原告らのような一般戦争被害者に対しても、旧軍人軍属等と同様に、救済や援護を与えることが被告の義務であったとする原告らの主張も、心情的には理解できないわけではない。」 
しかしながら、空襲被害は全国にあり、原因、様態、程度には様々なものが予想され、裁判所が救済判断をすることは極めて困難である。政治的判断にゆだねるほかはないと言わざるをえない。この問題は「国民自身が、自らの意志に基づいて結論を出すべき問題、すなわち、国会が、様々な政治的配慮に基づき、立法を通じて結論を出すべき問題と言わざるをえない・・・」

 一般戦争被害者に対する救済放置について

 戦前に、「軍人恩給法」「軍事扶助法」など旧軍人軍属に対する援護法と同様に、民間被害者のための「戦時災害保護法」があったが、GHQによって双方が廃止された。
 昭和27(1952)年「戦傷病者戦没者遺族等援護法をつくり(軍事扶助法の復活)、その翌年「軍人恩給法」を復活させ復活させるのであれば、一般戦争被害者のための「戦時災害保護法」も復活させるべきであったと、原告らは主張する。
しかし、国から戦地に赴くように命ぜられて実際に戦闘行為等を行い、その戦闘行為の結果死傷の被害を負ったという事実に着目したものであって、いったん廃止された援護制度を復活させるかどうかを判断するに当たっても、差別的意思に基づいて旧軍人軍属のみを優遇したとか、差別を設けることで一般戦争被害者を冷遇しようとしたと認めることは困難である。これをもって〔平等原則〕憲法14条に違反するとまではいえない。

2.行政不作為について

 被災者の実態調査(死傷者や罹災者、行方不明者、傷病者や親を失った孤児)を行う義務、死亡者の遺体の確認と埋葬を行う義務について、できるだけ配慮をすることは、国家の道義的義務であるという余地は、十分にあり得るものと考えられる。
しかし、特別の立法措置がこうじられていればともかく、これらの措置を執るべき旨を定める法律も存在しない。では法律を作ればいいではないかというが、作れという法律もないのであるから、調査、埋葬顕彰をしなかったことは、違法な行政不作為だったと断定することには疑問がある。

結 論

 以上の検討結果によれば、原告らの本訴を提起した心情は十分に理解できるものの、その請求は理由がないものといわざるを得ないから、これを棄却するものとし、主文の通り判決する。

以上判決理由要旨終ります。

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 一審判決理由を検討してみます 

 一般の皆様も、裁判員になったつもりで審理してください。憲法9条も、自衛隊法の存在で、条文の意義は半減しており、その上集団的自衛権が法文化されれば、9条の意義の8割以上は失われるでしょう。

裁判所の判断は、下記憲法条文すべてに違反しています。

[個人の尊重]
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

[法の下の平等]
第14条 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない。

[国及び公共団体の賠償責任]
第17条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。   → 国家賠償法

[裁判官の独立]
第76条3項 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職種を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

[合憲性審査権]
第81条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終番裁判所である。

 東京地方裁判所は、原告の苦難の人生とその心情をよく理解している。
 しかし、②③④の“しかし”につづく地裁判断は、憲法各条文に違反し、その存在意義を無化しています。そして棄却判決は完全に被告国の「答弁書」の要求に応じてしまいました(76条3項違反)。

前掲 の判例については、その通りであると誰もが認めると思います。本訴訟こそまさしく、例外的というよりも当然この判例文に相当します。

前掲 の文章で、国民自身の問題、すなわち国会の問題であることはその通りです。国会と政府は、憲法第13条“立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。”義務があります。

 にもかかわらず現状は、それが叶わないが故に原告らは公正な裁判所に訴えその判断を求めているのです。

 裁判所が、国会や政府の裁量に委ねなければならない場合(統治行為)というのは、国内法に優先せざるを得ない、他国間との条約などに関係する問題の場合などではあり得るでしょう。でも空襲被害者等の救済問題は国内法、すなわち国会と政府で解決すべき問題です。それが戦後70年を経ても全く解決できないがために、司法に訴えているのです。

 裁判所は、第76条3項、第81条等に則り、判例や旧憲法ではなく、現憲法を根拠に国会や政府の行動を審理、判断するのが義務です。

 司法で判断できる国内法問題を“広範な政治的裁量に委ねる”など書いて、憲法審査を放棄しているのです。自ら第76条、第81条違反をしています。

 違憲審査を避け、被告国の答弁書に与したり、国家の財政を慮ったり、裁判所が各種被害者に対してどう救援すべきかを判断することも困難だといっていては、三権の分立が成り立ちません。国の財政は政府と国会の問題。各種障害をどう救済するかの判断基準は、いま使用している障害者手帳の障害等級で決まっています。原告らは裁判所に障害の判断基準の作成を求めていません。

 それにしても被告国の代理人が答弁書で「戦争被害ないし戦争損害に対する補償は、憲法の全く予想しないところ・・・」という文言を使用する神経は理解できません。元はといえば、最高裁自身が出したカナダ在外財産に関する「最高裁昭和43年11月27日大法廷判決」を、被告国の代理人が笠に着たのでしょうか。本件は財的問題を問うていません。人的問題を問うているのです。訟務局と司法は、同じ穴のむじな、古い自家撞着に陥っています。それとも、国内の民間戦争被害者を救済しないことによって、近隣諸国との戦後補償関係条約の不備を蒸し返されるのを防ぐ暗黙の防波堤にしているのでしょうか。時代は変わりつつあって、国内の民間戦災救済問題は「沖縄戦」「南洋戦」訴訟へと広がっています。戦後70年、わが国は内外ともに大きな転換期に入らざるを得ないところにきています。

 戦前でさえ「戦時災害保護法」をつくって、民間被害者を実際に救済していたではないか。普通の文章の意味には裏背景がありますが、この文言は意味不明です。終戦後20~30年ではこれで通っていたのだろうか。強いて想像すれば、“憲法の予想しないところ”というのは、“憲法に書いてない”という意味か。そんなことはありません。国による被害救済のために憲法第17条が書かれ、国家賠償法が用意されています。被告国の代理人と裁判所は、憲法の条文を積極的に解釈せず、極端に消極的に解釈するか、あるいは無視することで、われわれ国民をだまくらかすための何かでしょう。 

前掲 の文章。この判断は合理的ではありません。立法化した当時は、差別意識はなかったかも知れない。新憲法が公布されていたにもかかわらず、まだ旧来の恒常的差別慣習のままであって、同じ民間戦争被害者を援護するという発想は強くなかったかも知れない。

 しかし、昭和48(1972)年、第71回国会に、空襲被害者を救済するための、社会党などの議員立法「戦時災害援護法案」が参議院に上程されたが廃案、その後昭和63(1988)年の第112回国会まで14回にわたって上程を繰り返すも、国会はいずれも廃案とした。この一般戦争被害者を救済せず、軍人軍属を救済する理由を問う質疑に対して、政府厚生大臣又は政府委員はいつも、「軍人・軍属は国家が使用者であるという関係から補償をしている」と繰り返し、明らかに憲法に違反することを自ら証明しています。軍人・軍属は社会的身分であって、14条1項に違反します。戦争被害の救済も、軍・民は平等でなければなりません。「戦時災害援護法案」を成立させるのが、政府と国会の努力義務だったのです。同じ戦争に因る死傷の救済は、憲法上軍・民に差はありません。

 昭和27(1952)年に「戦傷病者戦没者遺族等援護法」「恩給法」を上程した当時、国会議員が故意に差別するという意思はなかったとしても、憲法上、結果として違反する状態になっていることは明白です。憲法14条は、法律によって結果に差ができても、立法府に差別する意思がなければ違反にはならないと解釈することはできない。過失責任、立法不作為の罪があるでしょう。 

 これら軍人軍属援護関係法は、毎年のように改定していくかたわらで、議員立法で14回も国会に上程される「戦時災害援護法案」を無視、故意に廃案にする国会運営の差別意識は民主制度上に大きな欠陥があるに違いない。当時経済成長時代に入っており、財政難は理由にはなりません。

 更に加えて、行政による故意の差別を示すものとして、次の二つがあります。

 一つ、昭和55(1980)年12月11日、厚生大臣の私的諮問機関の原爆被爆者対策基本問題懇談会意見報告で、冒頭の基本理念において、
 「1.戦争という非常事態のもとで国民が何らかの犠牲を余儀なくされたとしても、それは国をあげての戦争による「一般の犠牲」として、すべての国民がひとしく受忍しなければならないものである。」
として、完全に当時厚生行政の代弁をさせています。
 何らかの犠牲の軽重の較差は、決して一律でない。ひとしく我慢できるような生易しいものではないことは、全ての人が認めるでしょう。

 二つ、総理府総務長官の私的諮問機関・戦後処理問題懇談会により、平和祈念事業特別の基金を創設する旨の報告が内閣官房長官に提出された。この昭和59(1982)年12月21日の「戦後処理問題懇談会報告」の 別添 の冒頭で、以下のように書かせています。
 「1. およそ戦争は、国民全てに対し何らかの損害を与えるものであり、全国民がその意味で戦争被害者といえるものであるが、その中で、戦後処理問題とは、戦争損害を国民の納得を得られる程度において公平化するため国がいかなる措置をとるかという問題である。 
 政府は、これまで、その段階、段階に応じて戦後処理を行ってきたところであり、その結果、昭和42(1967)年、在外財産問題の決着をもって戦後処理は一切終結したことを政府与党間において了解したところである。」
 この懇談会の準備会合で、「外務省として、懇談会で取り上げ検討することすら、すべて反対」(外務省課長)、「パンドラの箱をぐっと閉める方向に持って行きたい」(内閣審議室長)などの発言があった。会議はそうした官僚らのお膳立て通りに進んで行った、という。

 この二つの懇談会報告は、民間戦争被害者を救済から除外した証拠、完全に故意による行政不作為の証拠です。行政の裁量の逸脱と濫用に当ります。裁判所が、この事実を知りながら、憲法13条や14条の条文の俎上で検討しないのは、自らも司法裁量の大きな逸脱・濫用を犯しています。

 結果として、われわれ国民は、すなわち国は軍人軍属関係に累計53兆円も援護してきた。昭和27年サンフランシスコ条約が発効すると、国会は、軍人軍属に「戦傷病者戦没者遺族等援護法」をつくり、その翌年「軍人恩給法」を復活させました。援護法はまあ当然でしょうが、恩給法まではどういうものか。階級は14段階に分けられ、大将は年800万円、最下位の兵は年150万円の恩給、従事3年未満の兵は恩給無し。現在憲法上、法律上、軍人という職種も階級も無いはずです(第14条違反)。 

 一方同じ国家による民間戦争被害者の補償はゼロ、生活の不具合や治療のための費用は自前。たとえ差別意識はなかったとしても、結果によるこの格差は甚大です。戦争を推進してきた、全く身体に障害のない軍人軍属と、片や家族を失い、顔面大火傷跡、手足に障害を負い続ける民間被害者の人生。

前掲 について。 「措置を執るべき旨を定める法律も存在しない。では法律を作ればいいではないかというが、つくれという法律もない」とは、よくよく国民をなめたものです。第11条、第25条、そして第13条が保障しています。公文書のなかの重大な失言でしょう。いくら答弁書に沿おうとするにしても、そこまで無理な理由づけするとは異常な裁判です。大震災などでも自治体は犠牲者の処理、施設の復旧措置をし、被災者を救済・援護をする法律をつくり、施行しているではないか。各地方自治体が、被災、被害の実態調査などをせずに「災害救助法」、「災害弔慰金支給法」その他の災害補償が実施できるでしょうか。

 以上検討した状況は、まさに判決理由書 前掲の文章に書かれている場合に当たります。再度掲げます。

 「立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白であるにもかわらず、国会が正当な理由なく(60年もの)長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けるものというべきである(最高裁判所平成17(1998)年9月14日大法廷判決)」

 憲法第17条によって、国家賠償法「第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」を適用する必要があったのです。

 にもかかわらず、②③④において、憲法を極力矮小化、あるいは無視してしまいました。

 鶴岡稔彦裁判長は、最高裁の判例や被告国の答弁書にこだわることなく、第76条、第81条を守り、この「最高裁判所平成17年9月14日大法廷判決」に順じ、判決文で被告国に対して、少なくとも「空襲被害者等を援護するための立法化をせよ」という勧告を主文に加えるべきであったのです。

因みに、欧米諸国の戦後処理はどうでしょうか (訴状より要約)。
 敗戦国ドイツでは、1950年、「戦争犠牲者の援護に関する法律(連邦援護法)」がつくられ、当初は軍務または準軍務に関連して損傷を受けた者が健康上、経済上影響を受けた場合、本人またはその遺族が対象となった。ドイツでも日本の「防空法」と同様に、市民に防空義務が課せられていたため、対象は外国籍所有者、一般市民、外国居住者も対象となりました。いろんな給付が非常に細かく行き届いています。
 戦争による住居破壊など物的損害についても、「負担調整法」によって、日本では想像できないほどたくさんの細かな角度から補償しています。
 連合国に対する賠償請求権を放棄したので、連合国による私的被害をドイツ政府が代償しているのです。

 英国、フランス、オーストリア、アメリカなど欧米諸国も、第一次大戦でドイツに課した過度な賠償を反省して、ドイツに因る自国の戦争被害者を、自国で軍・民の区別なく、人的・物的に細かく援護をしています。 

参考     戦後処理の残された課題
  ― 日本と欧米における一般市民の戦争被害の補償 ―

東京地裁判決の検討を終ります。


▼ 第二審 東京高等裁判所

 平成22(2010)年5月28日、原告団は、東京地方裁判訴の判決を不服として、東京高等裁判所に控訴しました。

 控訴審は、6回の口頭弁論のあと、平成24(2012)年 4月25日、東京地裁同様に、鈴木健太裁判長が棄却する主文を読み上げて、三人はそそくさと退席しました。

 判決理由文を読むと、東京高裁も、東京地裁と同様、原告の苦難の人生とその心情を理解しているようです。しかし結果は、第一審の判決理由を踏襲し、被告国の答弁書に沿っています。


▼ 第三審 最高裁判所

 東京高裁が平成24(2012)年4月25日に出した判決を不服として、5月7日最高裁に原告団が上告しました。

 それに対して平成25(2013)年5月8日に最高裁第三小法廷から上記の決定が弁護団に通知されました。いわゆる三行決定。

決   定
主   文
本件上告を棄却する。
本件を上告書として受理しない。
上告費用及び申立費用は上告人兼申立人らの負担とする

理   由
1 上告について
民事事件について最高裁判所に上告することが許されるのは,民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、本件上告理由は,違憲及び理由の不備をいうが,その実質は単なる法令違反を主張するものであって,明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。

2 上告理由について
本件申立て理由によれば,本件は,民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文の通り決定する。

             平成25年5月8日
                  最高裁判所第一小法廷
                  裁判長裁判官  横 田 尤 孝                          他 裁判官4名

 最高裁当局は、当初からの「決め」だったのか、あるいは一審と二審の経過から新しく対応する方向が見つけられなかったのでしょうか、憲法判断を止めてしまいました(第81条違反)。
 理由に書かれている「民訴法312条1項又は2項」「民訴法318条1項」は、理由になっていません。
 東京地裁と東京高裁の皆さんは、原告の被害をよく理解しています。でも最高裁の判例と被告国の代理人の指示に従うべく、懸命に無理な棄却判決理由をさがす姿が目に見えます。そして最終決定を最高裁に預けていました。
 今後、最高裁は被害者と国民の前に、このような下級裁判所裁判官が繰り返す苦渋を無視するとは考えにくいように思います。

空襲被害訴訟は続いています

 かくして東京大空襲訴訟は終わっています。しかし、大阪空襲訴訟は最高裁へ上告中、沖縄戦・南洋戦国賠訴訟-沖縄地裁審理中です。空襲等国内の戦後処理関係訴訟は、司法としても、全国空襲連としても続いています。

 大阪空襲訴訟  

 (防空法を中心に組み立てています)

第一審 平成20(2008)年12月8日、大阪地方裁判所に提訴。
       10回の口頭弁論と2回の証人尋問の後
      平成23(2011)年12月7日 棄却判決

第二審 大阪高等裁判所に控訴
     平成25(2013)年1月16日 棄却判決

第三審 最高裁判所に上告中 (平成26年8月8日現在)  

 国家が決めた「防空法」を順守したことで人的被害が大きくなった事実は、軍人軍属が国から戦地に赴くように命ぜられて被害をこうむったこととは、国の命令であることにおいて同じです。最高裁番所は、差別することはできないでしょう。
 前にも書きましたが、ドイツでも日本の「防空法」と同様に、市民に防空義務が課せられていたため、対象は、軍務関係者だけでなく、外国籍所有者、一般市民、外国居住者も対象となりました。
 最高裁が受理し、憲法に基づいて判断することを願っています。

 「沖縄戦」被害・謝罪及び国家賠償訴訟

(東京空襲犠牲者遺族会会報『せめて名前だけでも』37号より引用)

平成24(2012)年8月15日、原告70名(平均年齢80歳)、那覇地裁に提訴。 旧日本軍の軍事的公権力の行使における残虐非道行為に対する国民保護義務違反の不法行為責任をはじめ、立法不作為責任などの法的責任を問うています。
 昭和19(1944)年10月10日の沖縄大空襲(十・十空襲)と、米軍上陸で、国体護持・本土防衛のために、沖縄県民の命が捨石にされた。県民の4分の1の15万人が死亡、住宅の九割以上が焼失、家畜類も全滅に近く、県土は焦土と化しました。 
 本土の訴訟は空襲が中心ですが、沖縄戦の特質として、住民居住地域も主戦場となっており、軍による「住民加害行為・集団自決」の強要などがあげられています。裁判所は決して「国民ひとしく受忍すべき」と判断することはできない。公務員(日本軍)の不法行為による損害は、国にその賠償を求めることができる(17条)。
 日本軍による「集団自決」の強要や「住民加害行為」について、既に次の二つの裁判で認定されています。
 家永教科書裁判第三次訴訟の最高裁第三小法廷判決(平成9年8月29日)は、「本件検定当時の学界においては、地上戦が行われた沖縄では他の日本本土における戦争被害とは異なった態様の住民被害があったが、その中には交戦に巻き込まれたことによる直接的な被害のほかに、県民を守るべき立場にあった日本軍によって多数の県民が死に追いやられ、また集団自決によって多数の県民が死亡したという特異な事象があり、これをもって沖縄戦の大きな特徴とするのが一般的な見解であったということができる。」
 もう一つ、沖縄「集団自決」裁判(大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判)において、集団自決に対して軍による強制はなかったとする原告に対して、大阪地裁判決(平成20年3月29日)、大阪高裁判決(平成20年10月31日)ともに、「日本軍による住民加害」があったと判断し、原告の請求を棄却しました。それに対する原告の不服申し立てに対して最高裁第一小法廷は上告棄却、不受理決定(平成22年4月21日)としました。
 軍人軍属との法的援護の差別(法の下の平等・憲法14条違反)のほかに、一般住民被害者間の援護差別の問題もあります。

 「南洋戦」被害・謝罪及び国家賠償訴訟

平成25(2013)年8月15日、原告24名(平均年齢80歳)、那覇地裁に提訴。

日本の統治領とし、国策に基づいて移住した南洋の住民居住地で、初めて日米軍の地上戦が行われた。後の沖縄地上戦と同じ悲劇が、すでにサイパン島のバンザイクリフなどが行われており、約2万5000人が命を失いました。


おわりに
 最高裁判所の皆さまは、少なくとも空襲被害者の原告は、裁判所の判断は、完全に間違っていると考えていることを認識してもらいたいものです。
 このような主張をしても、最高裁は高度な政治的判断が必要、すなわち統治行為論をほのめかすけれども、空襲訴訟は完全に国内問題です。国内の補償を完了させると、二国間の条約に漏れる外国人の戦後補償問題に広がるとまで、裁判所が考えているのだろうか。自国の被害者を受忍(我慢)させることで、近隣諸国の裁判や犠牲者への出費の広がりを抑える、こんな政府の思惑を最高裁が指示されたり、慮る権利も義務もない。むしろ大変な越権であってよくないはずですから、私の考えすぎだとは思います。
 自国の被害者は自国が救済する。外国の被害者については対等に、互いに理解し合い、辛抱強く外交で解決していくのが当たり前です。
 わが最高裁は憲法にのみ基づいて判断し(81条)、政治を正すこと。文明国日本として、誇れる司法を望んでやみません。
                           

                                           以 上